南城市「胃袋」。沖縄の自然とビストロの感性がまじわる魔法のお店
※記事の情報は執筆時点のものとなります(8年前の投稿)
「料理は魔法」
胃袋に行くと、この言葉が頭から離れなくなりました。
少し遅い奥さんの誕生日祝いに、南城市にある「胃袋」へ行きました。ちょっと変わった名前のビストロです。
あの不思議な空間を、あのしっとりとした暗さを、あの予期せぬ素材選びを、そしてあの美味しさを。もう一度あれを味わいたいな、記事を書いている今もそう思います。
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隠れ家的な名店
ここ胃袋、私たち夫婦がチェックしている食通のブロガーさんがどのかたも感動しているお店なんです。
胃袋へ行った方からも上がる声は「独創的、天才的、芸術的..」、料理への賞賛というよりはアートへの賞賛のような感想です。
一体、どういうお店なんだろう、と、前々から気になっていました。
ヨーロッパ的雰囲気の、しっとりとした暗さ
夜、お店に向かいます。南城市の玉城、坂を下る途中に隠れ家のようにお店はありました。
真っ暗な森の淵に明かりが灯っていて、なんとも不思議な雰囲気。
2月といえども、沖縄の気温は本州の春手前。
建物の入り口には梅らしき花が生けられていました。
入り口の扉。あら、取っ手をよく見ると..。
取っ手の形が「胃袋」になっています。
お店の名前をもじっているんですね。いいですね、こういうの好きです。
中に招きいれてもらいます。
お店の中は照明が抑えられうっすらと暗くなっていました。
お店の内観は中世のヨーロッパのような雰囲気。
ロウソクの明かりで、この暗さがとても心地いいです。
私たちが座ったテーブル席の向こうにカウンター席。
その向こうはキッチンになっています。
キッチンではオーナーさんが料理を作っています。キッチンの先には、亜熱帯の植物が茂る庭が。
南城市は沖縄らしい自然があふれる場所ですが、それと、この中世ヨーロッパ的な空間が合っていて、一種独特の雰囲気を感じられます。
実際の食事もこれくらいの明るさ。
ロウソクの明かりで食事を照らす感じです。
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独創的な感性あふれる品々
食事は「おまかせコース」のみ
テーブルに着くと、オーナーさんが声をかけに来てくださいます。
胃袋の食事メニューは「おまかせコース(4000円/名)」の1つだけ。メニュー表もありません。
※メニュー・価格は2016年時点のものです。
飲み物は、赤・白ワイン、ビール(ハートランド)、ノンアル(オリジナルのカクテルドリンク)など。ワインはボトルもあるそうです。
私たちももちろんおまかせコースをお願いします。
飲みものは、奥さんがビールを、私はハンドルキーパーなのでノンアルドリンクを注文しました。
ハートランドとノンアルドリンク
今日のノンアルドリンクは、タンカンとシークワーサーに生姜とスパイスを加えたものだそう。一口飲むと柑橘の香りが広がり美味しいです。とても甘いんですけど、スパイスのせいか喉に残らないので食事にも合いました。
こりゃドリンクから期待できるなぁ、と、奥さんのハートランドを注いであげます。
飲めないから注ぐだけでも楽しもうと思って笑
名前のない料理
ドリンクを飲みながら奥さんと話していると、最初の一品が。
こちらです。
胃袋、面白いのは料理に名前をつけていません。いや、正確に言えば、オーナーさんが一つ一つ、つかった材料や調理の仕方などを話してくださいます。それが料理名と言えば料理名。
「これは、しらはな豆をオリーブオイルで和えて、お塩だけで味付けしたものですね。
こちらは、、伊江島の小麦をつかって、アーモンドを混ぜたサブレと、新ジャガにチーズを混ぜたマッシュポテト、カリフラワーとガーリック、ディルをみじん切りにして重ねたものです。
一番上に添えた葉は、ディルです」
静かに調理のことを思い出すように教えてくれます。
しらはな豆はオリーブオイルと塩だけなのに、ふんわりとした優しい風味がとても美味しい。
こちらの重ねも、サブレのざくざくとした歯ごたえと、マッシュポテト・ガーリック・アーモンドの味がとても合っていて美味しいです。
材料や調理のことを教えてもらってから食べると、同じ美味しいでも楽しみ方が変わります。
素材それぞれの味わいに自分の関心が開いているな、という感じがあります。
ちなみに奥さんがメモ帳を出して、料理の話を一生懸命メモし出したところ「..メモするかた、初めて見ました笑」とのコメントをいただきました。
すみません、ODAYでちゃんと書きたかったんです笑
奥さんの方を見ると、前菜にして最高に美味しい状態。いい絵だ。
カブがスープ?カブのすり流し
前菜の次に出てきたものがこちら。
なんだろう?コーンスープ?まさかのおかゆ?と思いましたがぜんぜん違いました。
「カブの蒸し汁をお塩で味を整えて、オリーブオイルでちょっとだけ香りをつけました。すり流しですね。」
な、なんとカブでした。意外な材料にびっくり。
玄米とピンクペッパーがアクセントとしてのっています。
こちらのすり流しも、優しい味。
味付けは最低限で、とてもシンプルなのですが、素材を活かすのが本当に上手なのかとても豊かな風味です。
とんぼマグロのたたきは塩糀とレモン
次はマグロです。なんだか次の料理が出てくるのが楽しみです。
とんぼマグロのたたきには、塩糀と、南城市で採れたレモンとキンカンが和えてあります。
沖縄だと「長命草」という名前でよく売られているサクナも、みじん切りにして一緒に和えていあります。
レモンとマグロ、よく合います。今度、家でどうにかマネできないかと思った一品。
メインは蒸し豚とアサリとパクチー
メインの前にワインを注文した奥さん。
「今日のメインでしたら白が合うと思います」と言われ、白に。
さてさてお楽しみのメインです。
「初めてお越しいただいた方に、よくお出しするメニューなんですけど..」そう言って出してくださいました。
沖縄県産の豚肩ロースを、1時間程度じっくりと蒸し、アサリと合わせて蒸したものだそうです。
味付けはバターとお塩だけ。
豚肉とアサリは、これまた意外。新しい組み合わせですね。
付け合わせのパクチーと合わせて食べると美味しいそうです。
メインと一緒にパンも出してくれます。
パンは八重瀬町にある内田製パンのものを、さらに焼いてざくざくとした食感にしたもの。
2人前とは思えないくらい、大皿にたっぷりのお肉とアサリ。
食べてみると、「う、うまい!!」
よく考えてみると、豚ダシも、アサリダシもとっても美味しいですよね。それの合わせダシなんですもの。
パクチーと一緒に食べると、さわやかな香りが鼻の奥に抜けて、癖になります。
このメニュー、オーナーさん自身も大好きで、ご自分でもよく作るのだそうです。なるほど、おすすめしてくださる理由がよくわかりました。
最後のデザートまで発見の連続
楽しい美味しい時間はあっという間に過ぎて、デザート。
生乳を攪拌(かくはん)して作ったチーズに、濃く淹れたコーヒーと、ローストしたコーヒー豆を砕いてふりかけたものだそうです。
生乳チーズの新鮮な香りとふわふわな食感はもちろんですが、ローストしたコーヒー豆のインパクトですよ!
コーヒー豆を食べるって発想がなかったです。しかも、こちらも香ばしさと食感がチーズに絶妙に合います。
本当、最後まで発見に溢れたメニューで感動しました。
すっかり魔法にかけられました
お店を出る頃には、冒頭にあげた「料理は魔法」が、すっかり頭の中に浮かんでしまいました。
胃袋、素晴らしいお店です。
胃袋は、女性オーナーさんが一人で切り盛りする小さなお店。電話での予約が必須です。
1ヶ月、2か月後まで予定が埋まっていることも普通。私たちも1か月半くらい前に電話したところ予約が取れました。
ちなみに電話口のオーナーさんは非常に物腰柔らかく、優しい対応をしてくださり、お店に行く前からいい気分になりました。