琉球信仰を知る。久高島の聖地を友人と巡ってきました
※記事の情報は執筆時点のものとなります(8年前の投稿)
1月3日、お正月三が日の最後の日。
私は友人と「神の住む島」、久高島におりました。
亜熱帯の冬特有の妙な暖かさと、しとしと降る雨、謎にうねる波。
ちょっくら神がかった(?)お正月の様子を、ご紹介します。
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正月早々、琉球信仰の理解を深める
正月三が日は貴重なダラダラタイム。
全力でダラダラしようと努めていたのですが、東京にいる友人(会社員兼メディアアーティスト)から「琉球信仰について興味があるから久高島に行ってみたい」という話を聞きました。
どうやら現在作っている作品に関して、琉球信仰についての知見が欲しい模様。
琉球信仰かぁ、沖縄に住んでみたもののあんまり理解してないな…。
「よっしゃそれなら私も!」と、一緒について回ることにました。
ちなみに今回ピノ子さんは、お正月は家でとことんダラダラしたいからとお家で待機でした。
久高島とは
久高島は、南城市の知念岬の数km先の海上にある島です。
琉球神話上の「神の住む島」と言われ、古くから沖縄の最高霊地と言われていました。
世界遺産である斎場御嶽(せいふぁうたき)の祈りの場所から、久高島を見られるのが有名ですね。
琉球の始祖「アマミキヨ」という神様が降り立った場所と言われています。
12年に1度の祭事、イザイホーなど、神秘的な祭事が、現在もそのまま残っており、学術的にも非常に貴重な島です。
昨年、一度訪れたことはあるのですが、離島にしちゃ近いから行ってみたくらいの感じだったので、今回は琉球信仰の理解を深めることをテーマに行ってみようと思います。
友人と久高島に行ってみます
昨日までの気持ちの良い晴天が嘘のように雨になり、曇天と雨。ある意味、聖地を巡る感じではあります。
友人を那覇のホテルに迎えに行き、南城市、安座間にある久高港へ。
一緒にまわる友人
いちはらえつこ氏(アーティスト名)。
顔・名前出しOKいただけたのでご紹介します。
ウェブやテレビ、あらゆるところで人気をはくしています。非常にユニークな作品で笑えて楽しいですが、本人に話を聞くと、コンセプトはいたって真面目。
日本的な感性で、私たちの目が届かないものへの視点も鋭く、そしてテクノロジーへのセンスもすごい。
でも作品は笑えます。
現在、デジタルシャーマンプロジェクトというアートプロジェクトをしていて、今回はその調査も兼ねての旅だそうです。
久高島までフェリーで15〜20分
久高島へはフェリーか高速船でいきます。15分〜20分、結構すぐ着きますよ。
フェリーの中で、ネットをフル活用して琉球信仰の予習をしていきました。
久高島に到着しました。
乗船待合所で、レンタル自転車を借りて、島を巡ります。ここには、お土産やちょっとした軽食もあります。
胃腸風邪のいちはらさん、ここで一息いれて「葛湯(くずゆ)」をいただきます。
乙ですね。
葛湯を飲む間、デジタルシャーマンの試作を見せてもらいました。
さてさて、お腹も満たしたところで、久高島を巡ります。
久高島は聖地だらけ
さすが神の島とも言うべきか、久高島、聖地やそれに関わるスポットだらけです。
一息で名前を挙げるだけでも、久高殿、フボーウタキ、伊敷浜、外間殿、カベール岬、ピザ浜、大里家、ヤグルガー…、行くべきところがたくさん!
さすがに全ては回れないので、主要なところをぼちぼちまわることにしました。
ママチャリをこいで出発です。
久高殿をいきなり見逃す
「最初は久高殿に行ってみよう!」とチャリを漕ぎだし、15分。
見つけられませんでした涙
いや超ポピュラーな場所なんですけどね。
地図が読めない女と、地図が読めない男のコンビの実力が如何なく発揮された瞬間です。おかしいなぁ汗 そんな見つけにくい場所じゃないはずなんだけどなぁ。
でも時間も限られているので、泣く泣く次の場所へ向かいます。
禊の場、ヤグルガー
海辺に湧き水があるようで、絶景です。
沖縄は昔から「水」の確保が課題となる土地で、湧き水や井戸が貴重だったと言います。
久高島にも昔から水場は大切にされてきたようで、ここヤグルガーもその一つです。
神事の際、女性が禊に使う水場でもあるそうです。海が近いのもあって、どことなく雰囲気あります。
階段が急なので気を付けましょう。
フボーウタキ
久高島、最高峰の聖地と言っても過言ではありません。フボーウタキ。
ウタキとは祈りの場所。非常に重要な霊地で、一般の人は立ち入り禁止です。
祝女(ノロ)という神官に当たる女性のみ、祭祀の時に入るそうで、現在でも様々な祭祀がここで行われているそうです。
「入り口だけでもやはり聖域の感じがありますね」と、いちはらさん。ウタキの入り口周辺を熱心に観察します。
確かに、しっとりとした静かな空気感は、聖域にふさわしい雰囲気です。
お昼休憩、「とくじん」へ
しばし、自転車を走らせたあと、雨あしが強くなってきたのでお昼休憩。港の近くにある食事処「とくじん」へ行きます。
しばしの休憩。沖縄料理、おいしかったです。猫もいて癒されました。
カベール岬
食事を終え、本日の最終目的地、カベール岬へ。
琉球の始祖「アマミキヨ」が降り立ったところです。すごい雰囲気!!
ちなみに冒頭の写真も、ここで撮ったものです。
天気も相まって、友人がまるで波をひきつけているかのような写真が撮れました。
波が岩場に打ち付けるため、断崖が内側にえぐれてるんですね。すごいうねりです。
こんな波なのに、岬はなぜか静か…。神様が降り立ったにふさわしい神秘的な場所でした。
琉球信仰ってなんだろうね
ある程度回ったところで、雨宿りをしながら、今回の主題「琉球信仰ってなんだろうね?」を話してみました。
けっこう面白い話ができたので、理解を深めるときの参考までに記しておきます。
ここからは、メディアアーティストと沖縄移住者(ヒゲ)の琉球信仰への考察になります。事実関係の精度は高くありませんのであしからず。
信仰の主体が女性
「琉球信仰で、まず気になったのが”神人”の存在」と、いちはらさんが興味を持っていましたが、琉球信仰では、ノロやユタと呼ばれる、霊的な物事を司る人の多くが「女性」です。
久高島の信仰にも「男性は海人」「女性は神人」という考えが、昔からあったくらい。
これ、沖縄全体でも昔からそうだったようで、琉球時代、信仰が王朝に影響を与えるようなときも、ノロと言われる人は女性だったようです。
時代を遡るほど男性主体になりがちな社会で、女性が主体を担う領域があるというのは特徴的なことなのかもしれません。女性主体から繋がった話で、「卑弥呼もそういえば女性でありかたが似てるよね」となりました。歴史に出てきますね。
神様が人の生活に近い
琉球信仰では、亡くなった方のいく世界(あの世)はグソー(後生)と言われています。
面白いのは、グソーは、普通に私たちが暮らしている「この世」と変わらないものとされ、死者にも普通の生活があると考えられていることです。
なので、お墓はご先祖様の生活を、私たちとつなぐ場所。
シーミー祭という、お墓で家族と先祖が揃ってごはんを食べる会なんていうのがあるのも納得。
お墓でピクニック!?沖縄では「シーミー」という行事があります。 | 沖縄移住ライフハック
お盆とかを考えるとわかりやすいですね。
おじいちゃん、おばあちゃんが仏壇に帰ってくるなんていう発想に近いです。
古墳時代の信仰思想と似ている
古墳時代の「古墳」も、グソーのような考えがあるそうです。
古墳はお墓。そこに生前、故人が使っていた鏡とかを入れて、あの世でも不便しないように持っていってもらうなんていうのもそうです。
あの世にも「利便性」があるっていう発想なんですね。
私たちの祖先は、昔から死後の世界を神秘にせず、日常の延長として考えていたのかもしれませんね。
考え方がおおらかで優しい
琉球信仰では、亡くなった方はグソーへ行き生活し、死後7代して死者の魂が親族の守護神になるという考えだそうです。ご先祖様は亡くなってもたまにグソーから帰ってくるし、7代すれば神様になり家族を守ってくれるんですね。
死者を「別れ」として区切ることなく、継続的に付き合いを続けていくのが琉球信仰。
話していると、本当にアットホームな考え方で沖縄らしい、と思いました。
昔、漁に出る男性と、土地で子供や家族を守りながら、生活の安全を祈った女性の存在があって、「女性=神人」となった経緯があるようですが、こう考えると、非常に優しい信仰思想ですよね。
久高島からフェリーで本島に戻った後、雨の中、いちはらさんは斎場御嶽(せいふぁうたき)にも行ってました。何かしら役に立つ知見が得られたみたいで良かったです。
女性主体の信仰というキーワードから、作品に活かせる部分があるかもしれないとのこと。琉球王朝などのまつりごとが始まる前の「もっと民間的で原始的な信仰」について、さらに興味を向けたいそうです。
いやはや、雨と体調もすぐれない中、どうもお疲れ様でした。
少しでも琉球信仰の理解が深まった
私も今回の一件で、かなり琉球信仰の理解が深まったように思います。まぁ専門家の方や信仰の当事者から見れば少しの理解なんでしょうけど、住んでるからにはいろいろと知れるといいですね。
と、いうわけで、私の神がかった(?)お正月でした。
いちはらえつこさん、ありがとうございました
今回、顔出しOKで一緒に久高島を巡ってくださった、いちはらえつこさん。作品のユニークさとニコニコ笑顔とは裏腹に、非常に真摯な姿勢で島を巡っていたのが印象的でした。ありがとうございました!